~総支配人から高校生へのメッセージ 第4話(後編)~ メルキュール東京銀座 佐々木 博氏
ホテルの運営全般を担う“支配人”。
支配人という立場で、このコロナ禍をどのように受け止めているのか。
未来のホテル・ブライダル業界をめざす高校生へ、支配人からのメッセージをお届けします。
~支配人から高校生へのメッセージ第4話(後編)~ メルキュール東京銀座 佐々木 博氏をお届けします。
――今、支配人として大切にしていることは何ですか?
チームとのコミュニケーションの継続を大切にしています。スタッフによっては自宅待機をしてもらっていたので、顔を合わせられなかったりすれ違いだったこともあり、さまざまなツールを駆使してコミュニケーションが継続できるように工夫していました。
今のような状況では、私たちの思うように結果も出ず、プレッシャーを感じてしまう雰囲気ですが、よりよい結果を目指して前向きに取り組んでもらえるように接する心がけに気を付けています。チームで目先の目標を共有し経過を確認しあうことはとても大切です。
感染拡大中の従業員の安全面にも意識を向けました。不安を感じるメンバーが部署長や人事担当へ気軽に相談が出来るような雰囲気作りや、皆の負担にならないようにホテルからマスクや手袋の支給をしたり、ホテルはこんな時期でも働いてくれるチームメンバーをサポートするという姿勢を示しています。
さらには従業員に対しての感謝の気持ちも大切です。色々な企業が取り入れていることですが「Thank You Card」の取り組みも実施しています。どのような些細なことでも仲間に感謝したい点をそのカードに記して対象の人に手渡します。「ありがとう」と言葉でいうことは簡単ですが、感謝の気持ちをカタチにして直接本人に渡すことで仲間との向き合い方が変わると信じています。
――コロナによる影響でスタッフの皆様の意識や提供するサービスに変化はありましたか?
ホテルの「内側」にアトラクションをと考え始めてから、それぞれのお客様の希望に沿った向き合い方をより意識するようになりました。コロナ禍で様々な不安を抱えている方が多い今は、そのお気持ちに寄り添う姿勢が重要だと再確認させられます。アコーでは従業員をハーティスト(Heartist)と呼びます。グループの文化として、業務プロセスを重視したサービスから、よりパーソナライズされたアプローチを実現できる個性を重んじています。コロナの影響で多くの制約がある今でもホテルへお越しになるお客様ごとの心情を想い、いかに心で接することができるかを養う時ですし、試されている時でもあると思います。
メルキュール東京銀座 ホテル支配人 佐々木 博 氏
1996年日本ホテルスクール卒業後、同校のスイスホテル研修生制度に選抜、チューリッヒのベストウェスタン・ホテルエアポートで料飲部門に勤務、帰国後はシェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテル、ホテルワトソンにて宿泊部門に勤務。2004年仏国ホテルグループ・アコーのメルキュール東京銀座でナイトオーディターからフロントオフィスマネージャーまでキャリアを重ね、2014年より系列のイビス東京新宿で副総支配人として勤務、2017年にアコーの人材開発育成プログラム「GM PASS」を修了。2019年メルキュール東京銀座に帰任しホテル支配人として勤務中。
――コロナ禍におけるこれまでの経験から、ホテル業界はどのような人材を求めているのでしょうか?
コロナ前から言えることですが、私たちは従業員数もさほど多くないコンパクトなホテルだからこそ、スタッフ一人一人の考えや働きがホテルの評価やビジネスを大きく影響させます。「お客様に喜ばれたい」「所属するホテルの役に立ちたい」「皆と共に活躍したい」といったホテルへの帰属意識を持てる方を歓迎します。とりわけ「アイデアを形に出来る」「結果に結び付く行動を起こせる」姿勢はとても重要です。経験や知識の量はさほど重要ではありません。時に失敗もするでしょうし、壁に当たることもあるでしょうけど、現場で成長するチャンスはいくらでもあります。だからこそ社会に出る前に日本ホテルスクールのような学校で基礎を学ぶことは皆さんの活躍の幅を大いに広げられると思います。
――コロナは観光業界に大きな影響を与えました。ホテルやブライダルの仕事に興味を持つ高校生にとってホテル業界は目指すべき業界の一つには変わりはないのでしょうか?
「もちろん」めざすべき業界ですね。皆さんもそうであるように、多くの人はいつか必ず旅を再開します。訪れた先で得られる出会いや経験で自身の価値を高められる「旅」というイベントは、この先多少のスタイルが変わっても多くの人たちが求める行動に変わりないと信じています。世界中の人たちが旅を再開した時、この業界に希望を持ってくださっている皆さんが、業界が求める人材であることは当然です。ホテルの仕事は、高校生の皆さんが希望をもって目指せる業界です。確かに今、この業界は苦境の中にいますが、近い将来皆さんに活躍していただけるホテルの一つでいられるように私たちも頑張ります。
今の社会では人々の多様化を重んじる文化が拡大しています。私のホテルでもさまざまな背景を持ったスタッフが日々活躍しています。スタッフ一人一人の違いを尊敬しあえる文化こそが私たちの価値だと思っていますし、この業界に多種多様な人達が挑戦してくださったら素晴らしいと思っています。
――豪華で立派な施設こそがホテルであるというイメージが広がっていた時代にホテリエをめざしていた佐々木さん。時代の移り変わりとともに、ホテルも時代に合わせて変化し、今、さまざまな新しい形のホテルも登場しています。生活様式に合わせたライフスタイルホテルもその一つ。
佐々木さんは「宿泊するお客様にどれだけ寄り添うことができるのか」、「ホテルがある土地の文化をお客様に提供・発信できるのか」、そして「ホテル周辺のビジネスパートナーの人たちをホテルに引き入れ、ここにしかない文化をつくりあげることができるのか」、という視点が本当の意味でのライフスタイルホテルには求められていると考えています。人と人を繋ぎ、街と融合するライフスタイルホテルを体現したいという心に秘めた思いが印象的でした。
多様なホテルがあるからこそ、ホテルの門を叩くとき、さまざまなホテルの良さを平等に知って欲しいという佐々木さんの思いをお聞きし、ホテル業界をめざす若い世代の人たちへ大きな期待を持っていることを改めて感じました。本日はありがとうございました。
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ホテル総支配人に聞く、これからの観光業界シリーズ
第1話 ANAクラウンプラザホテル広島総支配人 原 めぐみ氏
第2話 ザ・キャピトルホテル 東急 末吉 孝弘氏
第3話 ハイアット セントリック 銀座 東京 内山 渡教氏
第4話 メルキュール東京銀座 佐々木 博氏(前編)
第5話 SHONAI HOTEL SUIDEN TERRASSE 中 弥生氏
「強いぞ!日本の観光業界」シリーズ全6話
ホテルをはじめとした観光に関わる事業者は、「今、何ができるか」「新しい時代を迎えるために何をすべきか」といった視点で物事を考えています。 そしてコロナが収束した後に回復するための準備など、先を見据えて行動しています。
未来の観光業界を担う皆さんへ、お伝えしたい「強いぞ!日本の観光業界」
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