ホテル&ブライダル仕事ガイド
調理の仕事総料理長
背の高いコック帽は憧れの的。いつかきっと、あなたも!?
ホテルの調理部門は、宴会部門とレストラン部門に大きく分けることができる。総料理長とは、その2つの部門を合わせた最高責任者。つまり、大勢のコックさんたちのトップにいる人だ。ここまで偉くなると、みずから腕を振るうことはめったになく、監督として部門全体をコントロールするのが役目になる。
どんな仕事?
大きな宴会の予約が入ったしよう。さて、どんなメニューにするか。それを考えるのは総料理長の仕事。食材の吟味に始まり、色どりの良さ、全体的な調和、味覚の統一感など、あらゆる観点から考えてメニューを決めていく。もちろん、予算内で収まる工夫や、ホテルにとっての収支の計算も必要だ。適切な原価を考えながら、その範囲でどれだけ良い料理を供することができるか。それこそ、総料理長の知識と経験、センスがものを言う。
料理のことだけではない。調理部門全体の人事をあずかるのも、総料理長の重要な責務。各スタッフの適材適所を見定め、最大限に仕事の効率が上がるよう配慮する。
また、衛生面での周知徹底や、調理機器のメンテナンスも、最終的には総料理長の責任になる。というわけで、現場の面倒を見ると同時に、経営者の視点で物事を進めていく、すごく多面的な仕事であることがわかってもらえたと思う。
やりがい・面白さ
料理の良し悪しは、ホテル全体の評判に関わる重大事。いくら施設が素晴らしくても、料理の味が劣れば台無しになってしまう。それくらい調理部門の位置づけは重く、したがって総料理長の役割も大切なのだ。その意味で、総料理長とはホテルの看板を背負う存在でなければいけない。いわば、ホテルの“顔”だね。評判の良いホテルには、“名物”と呼ばれる総料理長がいることが多い。
それだけ重要なポストであれば、やりがいも大きいに決まっている。あの背の高いコック帽(フランス語でトックという)は、すべての料理人がめざすゴールの象徴、そして憧れの的。「いつかはきっと自分も」と、みんなが思っている。
難易度・大変さ
各界の要人を招いたパーティーなどで、数え切れないほど多くの人たちの味覚を満足させることができるなんて、料理人冥利に尽きるというもの。でも、そんな晴れがましい席に身を置けるような立場になるには、気が遠くなるほどの修業が必要なのはいうまでもない。
そして、料理の腕前だけでなく、人間としての円熟度が加わり、しかも人望や経営的センスを備えていなければ、総料理長のポストまで上りつめることはできないと、覚悟しておこう。エリートの中のエリートなんだな、やっぱり。ホテルの調理部門における、究極の到達点が総料理長というポスト。そのさらに上には、役員(取締役)というポストがある。じっさい、そのホテルの名物といわれる総料理長には、取締役の肩書きをもつ人が少なくない。