総支配人
管理・営業の仕事
ホテル経営も企業活動である以上は「組織」で成り立っている。ホテルによって組織の大きさや形態に多少の違いはあるけれど、頂点に立つのはどこでもジーエム。
その上にさらに社長や会長のポストを置く場合でも、実質的な統括権はたいていジーエムが握っている。宿泊、料飲、宴会、総務、経理、人事、広報、営業など、この本の後のページで紹介するすべての部門を取りまとめた組織の最上部に、絶大な権限をもって君臨しているのが、ジェネラルマネジャーという存在なのだ。
ホテルを大きな船にたとえると、よりわかりやすいかもしれない。舵を切っているのがジーエム。安全・快適な航海を続けるためには、各部門に問題がないかを点検しなければいけない。そこで、各部門の責任者に点検を指示する。報告を聞いて、問題点があれば改善策を練り、実行に移す。
でも、進むべき航路が決まっていなければ、舵の切りようがない。企業理念や営業戦略といったものが、その航路に当たる。さらに彼方を見つめ、景気状況や社会環境を把握しつつ、中・長期的な事業計画を策定する。これも舵切り責任者として当然の仕事だ。
トップの中のトップ。大きな組織を自分の采配で動かすのだから、やりがいはあるし、面白いに決まっている。一流ホテルのジーエムともなれば、収入だって破格だし、名声も得られる。ということは、このポストへ上り詰めるまでに、幾つもの厳しいサバイバルゲームを勝ち抜かなければいけないわけで、実力もさることながら、かなり運の強さも必要。
ほんのひと握りの、エリート中のエリートにだけ開かれた道であるということは、ぜひ知っておきたい。まあ、だからこそ、最終目標にする価値があるのだけれど……。
権限が大きいということは、そのまま裏返しで責任の重さにつながる。経営がうまくいっているうちは、ジーエムの手腕が高く評価されるけれど、売上数字が少しでも落ちたりすれば、一挙に非難の嵐が吹く。上からは社長や株主の叱咤、下からは次期ジーエムの座を狙う部下の突き上げが……。
また、その背中には自分の家族だけでなく、何百人、あるいは何千人という従業員と家族の生活が重くのしかかる……。なにがなんでも経営を支えていかなければならない。企業のトップマネジメントとは、そういうものなのだね。
ホテルの総支配人は、プロ野球の監督と立場が似ている。勝てば官軍だが、成績が落ちればすぐにクビが飛ぶ。「数字」がすべての世界で、その意味ではわかりやすい。
あるホテルで良い実績を残したら、もうワンランク上のホテルのジーエムを狙うとか、そういうことが海外のホテル業界(とくに米国系のホテル)では当たり前になっている。いわゆるヘッドハンティングも、海外ではすごく盛んだ。
そのあたりの割り切り方は、むしろプロのサッカー監督に近いかもしれない。自分を高く買ってくれるところがあれば、世界中どこへでも行く。その合理性と国際感覚に学ぼう!