購買
管理・営業の仕事
ホテルが扱う「物」の種類、つまり品目は2万~3万点といわれる。毎日消費するものだけを挙げても、肉・魚・野菜などの食料品、バスルームで使う石鹸・シャンプー・ハブラシセットなどなど、その数量は半端じゃないことが想像できるはず。電球が切れれば取り替えなくてはいけないし、事務担当のスタッフが使うボールペン、ノートなどの文房具も消耗品だ。こういった「物」のチェックと仕入れ・調達業務が、みんな購買部門に回ってくる。
それだけではない。調達した購買品の在庫管理も受け持つ。ということは、仕入れと在庫に関わる予算管理、すなわちマネジメント業務まで範囲に入るわけで、購買部門の責任者ともなれば相当に幅広い視野がもとめられる。しかも、細部にまで目が行き届く柔軟性も兼ね備えているのが望ましい。
良いものを見分ける目の確かさや、コストを最小限に抑える原価意識も、購買の仕事には必要不可欠。それに、仕入先の業者との付き合いがあるから、営業的なセンスも関わってくる。
ホテルビジネスでは、「材料費」と「人件費」が二大コストといわれる。その「材料費」を一手に引き受けているのが購買部門だから、責任が重いのは当たり前。と同時に、重責に伴う面白さ・やりがいも十分に感じられる。
毎日、さまざまな「物」と接していると、見る目が養われる。食材ひとつ取っても、どの業者の品質が良い、あるいは安いと見抜ける。自分では絶対に買わないような高級ワインなども発注するし、香辛料の種類とかにも詳しくなる。
より良いものを、より安く購入するのが務めでもあるから、流通の仕組みもわかってくる。そのうち、値段交渉がこちらのペースでできるようになり、仕事が楽しくなってくる。表舞台には立たないけれど、ホテルの屋台骨をしっかり支えているという実感だね。
ホテルが購買部を独立で設けているのには、いくつか理由がある。まず、各部署が別々に発注していたのでは、混乱が起きるから。そして、まとめて発注したほうが、値段を安く抑えられるから。
また、不正を防止する意味合いもある。たとえば、ある料理長が親しい業者さんと直接に取引していると、品物はBランクなのに、Aランクの請求書が来て、その差額分をポケットマネーにしちゃうとか。そういう不祥事も起こりかねない。だから、たとえボールペン1本といえども、何かを仕入れる際は必ず購買部が間に入り、業者と交渉するシステムになっている。
購買のベテランになると、食肉の産地へ出向き、自分で品質を確かめるようなこともある。つまり、プロフェッショナルとしての「目」をもっているわけで、ここまでいけば立派なもの。ホテルに限らず、流通やサービス関係のビジネスで広く通用する。
ちなみに、大型ホテルの購買部門は食材担当をはじめ、備品・消耗品担当、在庫管理担当、固定資産担当などと、物品・分野別に分かれているケースが一般的。これによって、各担当の専門性はより高くなっている。