スチュワード
宴会・料飲の仕事
コックさんたちが自分で洗うのは、鍋、ボール、バットなどの調理器具だけで、食器の洗浄には手を出さないのを知っているだろうか。そう、食器類を洗い、きれいに磨き上げるのは、スチュワードと呼ばれる専門職の役割なのだ。
とくに、繊細な模様の描かれた薄手の陶器や、傷つきやすい漆器、サビが出やすい銀器などは、洗って、拭いて、管理するための特別な知識が必要。そこで、プロフェッショナルとしてスチュワードが登場!
陶器、磁器、ガラス器は、壊れやすいものが多い。だから、保管まで含めた慎重な扱いが必要だし、欠損箇所があっても気付きにくい。そうしたことに留意しながら、捨てるべきものは処分し、代わりに同じものを補充して、一定数をいつも揃えておく。そして宴会のときなどに、人数や料理内容に合わせて必要な数の食器類を用意する。これらがすべて、スチュワードの業務範囲に入る。
グラスも陶器も食器も、ていねいに磨いてあげると、ピッカピカに輝く。それを見れば、仕事の疲れもどこへやら。本当に気持ちが良い。それを使って食事をする人々もまた、気持ちが良いに決まっている。宴会場やレストランのライトに光り輝くグラスと銀器。それは、スチュワードの誇り。目立たない裏方の仕事だけれど、料飲部門の全体をしっかりと支えている。
「料理を作るのは好きだけど、片付けるのが面倒で……」とは、世の主婦がよく口にする言葉。夫婦二人の家庭ならまだしも、大家族になると、食事の後片付けはやっぱり大変だものね。ならば当然、スチュワードの仕事も大変だと想像できるだろう。手は荒れるし、肩もこるに違いないし……。
それに、たとえば銀器といっても、フォークだけでフルーツ用、デザート用、肉用、魚用、エスカルゴ用、オイスター用など、いろいろな種類がある。それを覚えるだけでも、かなりの修業期間が要るのだろうな。
大型ホテルではスチュワード部門が確立しているが、中小規模のホテルだと外部の食器洗浄業者に委託しているケースも少なくない。
また、外資系のホテルは分業制、専門性がはっきりしているため、調理器具といえども、コックさんは洗いものに手を出さない。その場合、外部業者が入ってキッチンの清掃もすべて請け負い、コックさんたちの仕事が終わった後に片付ける。
こんなふうに、専門職としてのスチュワードの位置づけは、ホテルによってかなり異なる。
~ 食器磨きのコツは? ~
陶器の皿は指紋が付かないように、皿の外側と縁を片手で押さえながら、専用のタオルで表面をていねいに拭いて光沢を出す。
ナイフ、フォーク、スプーンなどの銀器の場合は、両手で広げたタオルの中で、包み込むようにして持ちながら、片手で柄の部分をつかみ、もう一方の手でとくに先の方の汚れに注意しながら磨く。
足付きのワイングラスを磨くときは、両手で専用タオルを広げ、グラスの台座部分をくるむように持ち、もう一方の手でタオルをグラスの中に入れながら、内側と外側を拭く。割れないように力の加減にも注意しなければいけない。
あ~、なんだか肩がこりそう。