宿泊の間違いやすい敬語
宿泊のお仕事は、フロント・ベル・ドア・コンシェルジュなど様々ありますが、お客様がホテルを訪れて最初に接する場であり、ホテルの顔とも言えます。
お客様のホテルに対する印象に残りやすい場所だからこそ正しい敬語を使用したいですね。
宿泊のお仕事でよく使われる不適切な敬語の使い方と共に正しい敬語を見ていきましょう。
お客様から荷物を預かる時
荷物をもちます。
お手荷物をお持ちいたします。
解説
手に持っている(ボストンバッグのような)荷物は「お手荷物」と表現し、大きな(カートのような)荷物と表現方法を変えています。「持つ」を謙譲語の「お~いたす」とし、最後の「ます」で積極的にお手伝いする姿勢を表します。
お客様との会話にて
車で来られましたか。ご苦労様です。ごゆっくりしてください。
お車でお越しですか。お疲れのことと存じます。ごゆっくりとお寛ぎくださいませ。
解説
「車」に尊敬語の「お」をつけて「お車」、「来る」の上級尊敬語で「お越しになる」とします。ご苦労様は癒す言葉かけではありますが目上の方やお客様には遣いません。「お疲れのことと存じます」の「存じます」は「思います」の丁重語です。お客様が本当に疲れているかどうかは判明できないので、相手を察する言葉かけです。「ゆっくり」に美化語の「ご」と「と」をつけ、「して」をより具体的な動作の「くつろぎ」を用います。「ませ」をつけて丁寧な依頼の気持ちを表します。
迷われているお客様へのお声掛け
どうされましたか。
お客様、いかがなさいましたか。
解説
急に話しかけることなく「お客様」と呼びかけます。その上で「どう」の丁寧語の「いかが」とし、「されましたか」は尊敬語ではありますが「れる・られる」の一般敬語です。より上級の「する」の置き換えの尊敬語「なさる」の活用で「なさいました」がホテリエにとっての言葉遣いです。丁寧な音調でお声掛けします。
案内板を見ているお客様へのお声掛け
どこを探されていますか。
どちらかお探しでいらっしゃいますか。
解説
「どこ」を丁寧語で「どちら」に、どちらかの「か」を付けることで直接的でない間接的な敬語表現です。探されているは尊敬語ですが「れる・られる」の一般敬語です。「探す+いる」の言葉を上級尊敬語の敬語連結で「お探しでいらっしゃいますか」と置き換えてホテリエの言葉遣いになります。
レジストレーションカードへの記入を促す際
ここに名前と住所を書いてください。
恐れ入りますが(お手数をおかけ致しますが)こちらにお名前とご住所をお書きくださいますか。
解説
文頭にクッション言葉をつけることにより その後ろが柔らかくなります。[ここ]の丁寧語は[こちら]、名前と住所に尊敬語の「お」と[ご]をつけ、[書く]を尊敬語にし、[お~くださる]と変化します。お伝えする時は声のトーンも大事です。
お客様へカードキーをお渡しする際
これが部屋のカードキーになります。
こちらがお部屋のカードキーでございます。
解説
「これ」は丁寧語の「こちら」に、「部屋」に尊敬語の「お」をつけて「お部屋」。「~になります」は何かに変化するときや結果を表すときに使う表現であり、丁寧な言葉遣いとしては誤用、「ございます」は丁寧語です。渡す動作は両手を添えて行います。
会計の際にお金を受け取って
一万円からお預かりします
一万円お預かりします
解説
コンビニなどでは、なぜかよく使われる表現です。「から」に意味はありませんので不要です。また、「〇〇円ちょうどお預かりします」という表現もよく使用されますが、ちょうどの場合はお返しするもの(おつり)もありませんので、「お預かりします」ではなく、「頂戴します」「いただきます」を使用してください。
リムジンバスのご案内の時
成田空港行きと羽田空港行きがございますが、成田空港行きでよろしかったでしょうか
成田空港行きと羽田空港行きがございますが、成田空港行きでよろしいでしょうか
解説
「よろしかったでしょうか」は典型的なマニュアル敬語
お客様から荷物を預かる時
お荷物の方はこちらで全てでしょうか?
お荷物はこちらで全てでしょうか?
解説
接客、ビジネスで使われることの多いこのような「の方」の使い方は正しい敬語ではありません。複数あるうちの1つを示し比較する時には不自然ではありません。(例「こちらの窓側のテーブルの方が眺めがよいです」)
電話口のお客様の客室へ行く時
すぐ、お部屋にお伺いいたします
ただいま、お部屋にお伺いします
解説
「伺う」が謙譲表現であるため、同じく謙譲表現である「いたす」を付けると二重敬語となり正しくありません。
また、「すぐ」よりも「ただいま」の方が改まった表現となり適切です。
チェックイン手続き時
あしたの朝食用のバウチャーチケットでございます。
明日(みょうにち/あす)の朝食用のバウチャーチケットでございます。
解説
「きょう、きのう、あした」は「ほんじつ、さくじつ、みょうにち(あす)」が相応しい表現となります。